留意事項

表現やビジュアルに関する配慮

尖端恐怖症の方々へ

 焼き鳥という文化の特性上、尖端性を持つ「串」のビジュアル情報をすべての投稿記事から完全に排除することは困難ですが、当サイトでは以下のような配慮を行っております。

写真の構図に関する配慮

 串の尖端側が画面の奥側や読者から離れる方向を向くように撮影・掲載しています。

投稿記事の構造による分離とジャンプ機能の活用

 各記事の最上部に目次を設け、各見出しへワンクリックでジャンプできる機能を用意しています。
 具体的な串ものの情報は「焼き鳥中」の見出し内にまとめていますが、このジャンプ機能を利用することで、該当のビジュアルを視界に入れないまま記事の文章情報を閲覧することが可能です。


 なお、導入部の「焼き鳥前」のセクションにおいては、「串」の画像掲載はございませんが、着席時の撮影等により、「箸」の尖端が写り込んでいる場合がございます。あらかじめご留意いただけますと幸いです。
画像情報が含まれるのは「焼き鳥前」「焼き鳥中」の2つのセクションのみですので、他のセクションは安心してご覧いただけます。

集合体恐怖症の方々へ

 一部の串ネタや〆もの(ちょうちん、そぼろ丼等)には、集合性を持つビジュアルが含まれる場合がございます。
 当サイトでは以下のような配慮を行っております。

注意喚起の提示

 該当する画像情報を含む記事の場合、その記事の冒頭にてあらかじめ注意喚起の文言を掲載いたします。

アコーディオン機能の設置

 予期せぬ視覚的刺激を防ぐため、該当すると思われる画像にアコーディオン(折りたたみ)機能を設けております。


 きんかんが1つのみのシンプルな形状のものなど、集合性が低いと判断される場合は通常提示となります。

読者の皆さまへ(アコーディオン機能について)

 上記の配慮により、一部の写真には折りたたみ機能が適用されております。
 該当のビジュアルをご覧になりたい場合は、お手数ですが各写真をクリック(展開)してご覧いただけますと幸いです。

食の安全に関する記述


 当ブログに掲載している食中毒や細菌に関する記述は、厚生労働省や食品安全委員会等の公開情報に基づく一般的な事実の整理をした上で、自らの食体験も踏まえて、焼き鳥店での食事を想定した場合に内容を合わせて文章を肉付けしています。医療的な診断や効果を保証するものではありません。食に関する判断の参考情報としてお役立てください。

鶏肉(内臓類含む)の生食・レア調理におけるリスク

 後述する「カンピロバクター属菌」や「サルモネラ属菌」による食中毒の発症で死亡する例は稀(基本的には予後良好で回復することが多い)ですが、ゼロではなく絶対に安全と言い切れない重篤化のリスクが潜んでいます。

カンピロバクター属菌

 鶏肉の生食・レア調理における食中毒の報告において、最も多い発生件数となっている食中毒菌です。
 鶏の腸内で共生しており、どれほど健康な鶏であっても解体時に鶏肉類などに付着するリスクが常に伴います。
 生肉はもちろん、加熱が不十分な鶏肉(内臓類含む)を食べることで発症する可能性が高まります。
 死滅させるための推奨条件は、「芯温75℃・1分間以上、あるいは、芯温65℃・数分」とされています。
 素材の特性上、温度帯が低めの傾向にある「ささみ」や「レバー」等の串ネタは、比較的リスクが高いです。
 生物学的にカンピロバクター汚染のリスクをゼロにすることは基本的に不可能であるため、ささみやレバー等、レア目に火入れをする店舗は、事前に火入れの希望について確認を取ってくれたり、リスクを抑えるための下ごしらえを施していたり、そもそも取り扱わない選択肢を取る店舗も存在します。
 レア調理による美味しさとリスクのバランスをどう取るかのスタンスは、提供側にも食べ手側にも選択権があります。少し勇気がいるかもしれませんが、不安な方は、断る、もしくは「よく焼きでお願いします」と伝えましょう。

潜伏期間:
 2~5日間
発症のタイミング:
 食後の翌日から1週間が目安
主な症状:
 激しい腹痛、下痢、発熱、倦怠感、血便など

回復までの目安:
 発症後から1週間ほどで回復に向かうが、個人差がある
合併症のリスク:
 1週間から数週間後にまれにギラン・バレー症候群(後述)と呼ばれる合併症を発症
重篤化の可能性:
 基本的に多くは1週間ほどで自然回復に向かうが、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している方の場合は重症化することがあり、ごく稀に死亡例や、ギラン・バレー症候群などの重篤な合併症を引き起こすリスクがある

「鮮度が良いからレア調理でも安全」というロジックの蔓延について

 科学的には、鮮度とカンピロバクター属菌の有無は比例しません。
 多くの一般的な食中毒菌(サルモネラ菌や腸炎ビブリオなど)は、時間が経って鮮度が落ち、常温環境などに放置されると「菌がどんどん増殖して危険になる」性質を持っているため、おそらくこのような背景が「このロジックが正しい」と誤解されている原因です。
 しかし、カンピロバクター属菌に関しては、一般的な食中毒菌と性質が異なります。
 カンピロバクター属菌は、食品中で増殖しない代わりに、わずか数百個程度の少ない菌量(一般的な食中毒菌による発症は数万〜数十万個以上)で発症してしまいます。一方で、食品中で時間経過とともに自然死滅していく性質があるため、時間が経過した肉・内臓よりも、解体されて間もない(鮮度が保たれている)状態の肉・内臓のほうが、菌が生存している確率が高くなると考えることができます。
 そのような理由から、「鮮度がいいほど、カンピロバクター汚染リスクが高まる」と提言している行政や研究機関も存在します。

カンピロバクター属菌の生存性(温度環境と影響)

冷蔵温度下:
 増殖はしないものの、長期間にわたって生き残り続けます。
冷凍温度下:
 時間の経過に伴い生存率は徐々に下がっていきますが、冷凍したからといって直ちに死滅するわけではありません。

カンピロバクター属菌の苦手な条件(弱点)

カンピロバクター属菌が苦手とする(弱点となる)主な条件は以下の通りです。

  1. 「通常の大気(酸素)環境」での増殖ができない
     微好気性を好むため、私たちが普段呼吸しているような通常の大気中(高濃度の酸素環境)では増殖することができません。
  2. 「乾燥」に弱い
     食品の表面などが乾燥状態にさらされると、急速に死滅・減少します。
  3. 「熱」に弱い
     熱に弱く、芯温75℃で1分間以上(または芯温65℃・数分間)の加熱を行えば、死滅させることができるとされています。

ギラン・バレー症候群(合併症)

 年間で10万人あたり1~2人ほどで発症頻度は低いですが、重篤度が高い病気です。
 特定の体質の人というわけではなく、子どもからお年寄りまで、誰にでも発症する可能性があります。

発症原因:
 感染源(カンピロバクター属菌など)を退治するために作られた抗体が、自分の末梢神経を誤って攻撃してしまうことで発症する
発症のタイミング:
 基本的には、風邪(上気道炎)や下痢などの胃腸炎(カンピロバクターなど)にかかった後、1週間から1ヶ月ほど経過してから発症する
初期症状:
 手足の先や足の裏のしびれ、階段を上りにくいなどの軽い脱力
中期症状:
 数日〜2週間かけて、手足の力が入りにくくなる症状が急速に悪化(左右対称に起こりやすい)
その他の症状:
 飲み込みにくい(嚥下障害)、ものが二重に見える(複視)、顔面麻痺、呼吸筋の麻痺など

回復までの目安:
 発症後から数週間~数か月かけてゆっくりと回復に向かうが、個人差がある
後遺症のリスク:
 一部後遺症やリハビリテーションを要する生活を求められる可能性がある

サルモネラ属菌

 サルモネラ属菌は外から感染して持ち込まれる病原菌です。
 鶏肉(内臓・鶏卵含む)の生食・レア調理で警戒すべきもう1つの代表的な菌です。

 サルモネラ属菌は、約5℃以下(一般的な冷蔵庫の温度)では増殖がほぼ停止します。そのため、「きちんと冷蔵管理されていれば、菌が数万〜数百万個に爆発的に増えて食中毒になるリスク」は防ぐことができます。
 ただし、冷蔵庫はあくまで「菌の増殖を止める(眠らせる・動きを鈍らせる)」場所であって、「サルモネラ属菌を死滅させる(殺菌する)」場所ではありません。
 菌自体は低温でも長期間生き残り続けます。

 「サルモネラ属菌を含む一般的な食中毒菌は大量の菌が繁殖しなければ発症しない」と従来は考えられていましたが、特に鶏肉・鶏卵に多いタイプの菌種である「サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis:SE)」などの一部のタイプについては、カンピロバクターと同様にわずか数百個〜数千個未満という少量の摂取であっても発症することが近年の研究や事例で明らかになっています。

 そのため、低温でしっかり管理したとしても、賞味期限を守らなかったり、加熱不十分のまま摂取すると、少ないとされる菌量であってもサルモネラ感染症を引き起こす恐れがあります。

潜伏期間:
 4~72時間
発症のタイミング:
 食後から6~48時間が目安
主な症状:
 吐き気、嘔吐、激しい腹痛、1日数回から十数回の下痢、38度前後の発熱など
回復までの目安:
 発症後から3日間~1週間ほどで回復に向かうが、個人差がある
 症状が治まっても、菌が完全にいなくなるまで約1か月かかることがある
重篤化の可能性:
 乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人は脱水症状や菌血症を起こして重症化しやすいため注意が必要

日本の生卵はなぜ安全なのか

 サルモネラ属菌(特にSEタイプ)による卵の汚染には、主に2つの経路があります。

  1. 卵の中身自体が汚染されるケース
     保菌している親鳥の卵巣や卵管にサルモネラ属菌が感染している場合、殻が作られる前の段階(黄身や白身が形作られる過程)で菌が内部に混入してしまいます。この場合、見た目は完全にきれいな殻の卵であっても、産み落とされた時点ですでに中身(黄身や白身)が汚染されているケースです。
  2. 殻を介して内部へ侵入するケース(二次汚染)
     産卵時などに卵の殻の表面に糞便などが付着し、時間の経過やその後の保存状態によって、殻の目に見えない微細な穴(気孔)から菌が内部(白身や黄身)へ入り込んでしまうケースです。

 微生物試験の枠組みに本菌も該当し、このサルモネラ属菌がもし卵の内部に万が一微量に含まれていたとしても、食中毒を発症するような菌量に増殖しない期間を逆算して「生食できる賞味期限」が設定されています。徹底した冷蔵保存の管理技術があるからこそ、この安全性が担保されています。

サルモネラ属菌の苦手な条件(弱点)

 サルモネラ属菌が苦手とする(弱点となる)主な条件は以下の通りです。

  1. 「低温(5℃以下)」での増殖ができない
     菌自体は低温でも死なずに生き残り続けますが、冷蔵庫の中(5℃以下)では代謝や細胞分裂がストップするため、「爆発的に菌量が増えて食中毒になること」を防ぐことができると言われています。
     (※冷凍環境においても同様に活動は停止しますが、完全に死滅するわけではありません)
  2. 「酸」に弱い
     サルモネラ属菌は酸性環境を嫌います。そのため、お酢やレモン汁などの強い酸性にさらされると増殖が抑えられたり死滅したりすると言われています。
     (ただし、食品の内部にまで酸が染み込んでいないと表面しか効果はありません)
  3. 「熱」に弱い
     カンピロバクター属菌と同様に熱には弱いです。基本的には芯温75℃・1分間以上(または65℃・数分間)の加熱を行えば、死滅させることができると言われています。

鶏刺しや鶏のたたき(内臓類含む)等のリスク

 上述した「カンピロバクター属菌」と「サルモネラ属菌」は、鶏肉(内臓類・鶏卵含む)の生食・レア調理において双璧をなす代表的な食中毒菌です。
 ここまでご一読された読者の皆さまには、生食・レア調理に伴うこれらの菌汚染のリスクを十分にご理解いただけたかと思いますが、改めて以下に要点を整理します。

カンピロバクター属菌:
 鮮度が良くても、わずか数百個の菌量で発症する可能性が十分にある。
 (新鮮だから安全というロジックは成り立たない)
サルモネラ属菌:
 乾燥や低温にしぶとく耐え、鶏肉や鶏卵などの表面や内部に潜んでいる。わずか数百個の菌量であっても発症リスクがある。

 鶏刺しやたたきだけでなく、鳥わさやレバーのレア焼き等、中心までしっかりと火が通っていないメニューであればすべてこれに該当します。
 これらのリスクを踏まえた上で、安全面を考慮して提供を控える店舗が多く存在する一方で、徹底した温度管理、信頼できる食肉業者からの仕入れ、提供の時期の制限など、レア調理における衛生管理に並々ならぬコストを払って、提供し続ける店舗も少なからず存在します。
 しかし、どれほど名店と呼ばれる焼き鳥店であっても、「食中毒のリスクを100%ゼロにすることはできない」というのが厳然たる実情です。
 どんなに細心の注意を払っていたとしても完全には排除できないリスクが存在するという事実を理解した上で、生食・レア調理されたメニューをいただくか否かは、まさに食べ手側の判断に委ねられています。

生食・レア調理メニューに併記されている注意喚起について

 店舗によっては、鶏刺し等のメニュー表記の付近に「体調が優れない方、免疫力が低下している方、お子さま・ご高齢の方は生食をお控えください」等の注意書きが併記されている場合があります。
 この類の表記を、背景を知らない人にとっては「単なる免責事項」や「不安を煽るためのもの」と捉えてしまいがちです。しかし、その本質は前述した通り「生食・レア調理における食中毒菌のリスクを完全に解消することは不可能であることを前提とし、その上でご自身の責任において選択してください」という、提供側からの極めて誠実なメッセージに他なりません。
 この背景にある意味を正しく汲み取り、客観的な事実とリスクの構造を理解した上で、それぞれの「美学」を持って楽しむ姿勢が食べ手側に求められます。

九州地方の鶏刺し文化について

 鹿児島県や宮崎県などの九州地方(主に南九州)では、鶏の刺身やタタキが日常的な食文化として深く根付いています。「なぜ本場の九州では日常的に食べられているのか?」という疑問は、食中毒のリスクを学んだ読者の皆さまなら誰もが抱く疑問の1つでしょう。

 九州で鶏刺しが日常的に食べられているのは、「単に鮮度が良いから」という神話的な理由ではもちろんありません。その背景には、「専用の処理場における徹底した衛生管理」「低温での迅速な流通網」「行政や地域による独自のガイドライン」という、構造的な裏支えが存在します。

 前述した通り、カンピロバクター属菌は鶏の腸内に常在しており、解体時のわずかな腸管の損傷によって、鶏肉等の表面に菌が付着するリスクが常に生じます。九州の食文化を支えているのは、まさにこの「表面汚染」を徹底してコントロールするための知恵とシステムです。

 具体的には、以下のような厳格な対策が講じられています。

  • 加熱用と生食用で包丁やまな板などの調理器具を完全に分離する。
  • 調理器具を83℃以上のお湯で殺菌処理するなど、二次汚染を防ぐための衛生管理を徹底する。
  • 必要に応じて、表面をサッと湯引きしたり炙ったりすることで、付着リスクのある表面層をあらかじめ殺菌する。

 事実、鶏肉の生食消費量に対して、九州地方での発症件数は一定の抑制がなされているというデータもあり、これは「衛生管理の徹底によってリスクを最小限にコントロールできる領域が存在する」ことを示唆しています。
 実際に現地の方に聞いても、「お腹を壊す人がゼロではないが、日常的に対策された文化として成り立っている」という実感が語られることもあります。

 しかし、ここで忘れてはならないのは、どれほど九州地方の管理技術や文化的ノウハウが優れていたとしても、カンピロバクター属菌等のリスクを「100%ゼロにすることはできない」という厳然たる事実です。

 実際のところ、行政や保健所も鶏肉の生食を推奨しているわけではなく、あくまで「地域の食文化」および「自己責任の範疇」として扱っています。
 管理のシステムによってリスクをどこまで低減できるかという「工夫の歴史」はあるものの、本質的なリスクの存在自体が変わるわけではないという冷静な視点を忘れてはなりません。

高坂鶏(世界唯一の無菌鶏)について


 当ブログに掲載している高坂鶏に関する記述は、(株)髙坂鶏農園の公式HPの情報をベースに、自らの食体験も踏まえてリライトしています。独自の考察も含めているため、あくまで参考情報としてお役立てください。

 焼き鳥に興味を持てば、どこかのタイミングで耳にすることになるであろう「高坂鶏」。
 高坂鶏をご存知の読者からすれば、「世界で唯一の無菌鶏なら生食・レア調理におけるリスクがないのでは?」と疑問を抱く方もいらっしゃるかと思います。
 私もその疑問を抱いている1人です。高坂鶏に関して科学的な根拠が示された情報は公表されていないのが現状ですが、できるかぎり客観性のある事実ベースの情報を基に言及します。

一般的な鶏はなぜ有菌であるのか

 まず一般的な鶏は、無菌ではなく有菌であることを前提としている理由を、改めて以下に要点を整理します。
 鶏肉(鶏卵・内臓類含む)の生食・レア調理におけるリスクの原因となっている代表的な食中毒は「カンピロバクター属菌」と「サルモネラ属菌」です。

カンピロバクター属菌

 カンピロバクター属菌は、鶏などの消化管(主に腸内)に共生している菌です。
 農場での飼育段階において、どれほど衛生管理を徹底し、菌の侵入を防ごうと試みても、鶏の腸内から完全に排除することは生物学的に極めて困難です。
 仮に腸自体を損傷させずに鶏の解体・加工を行うことができたとしても、腸と近接する部位であるレバーやハツなどの内臓類に関してはそのかぎりではありません。生物学的な側面だけではなく、解体・加工という物理的・構造的なプロセスにおいて菌の付着を完全に解消することは極めて困難です。

 事実、国内の流通鶏肉からは高確率(調査によっては6割以上)で本菌が検出されています。そのため、食中毒のリスクを100%ゼロに抑え込むことは、現状の生産・流通・加工・調理の管理の再現性という観点から極めて低いと言わざるを得ません。
 さらに、仮に腸内のカンピロバクター属菌の菌量を減らすことに成功したとしても、本菌はわずか数百個の少ない菌量で発症する可能性があるため、やはり「100%安全」とは言い難いのが実情です。

サルモネラ属菌

 一方のサルモネラ属菌は、主に外から環境や媒介物を介して感染・持ち込まれる病原菌です。
 カンピロバクター属菌が鶏の腸内という「内的要因」に由来するのに対し、サルモネラ属菌は「外的要因」であるため、理論上は排除できる再現性が高いと言えるかもしれません。なぜなら、鶏舎の環境、飼料や水の管理を極限まで徹底することができれば、侵入を防ぐことは不可能ではないからです。
 ただ、どちらにしても並々ならぬ高度な衛生管理を要するため、それを完全に排除し続けることがコスト面も含めて現実的であるのかという疑問は残ります。

 鶏肉・鶏卵に多いタイプの菌種である「サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis:SE)」による感染症も、カンピロバクターと同様にわずかな菌量で発症するリスクがあるため、こちらもやはり「100%安全」と言い切ることはできません。

高坂鶏の独自性について

養鶏家のバックグラウンド

 高坂鶏について触れる前に、まずはその生産者である高坂英樹氏の背景に言及しておく必要があります。
 高坂氏は、最初から一般的な養鶏の世界に身を置いていたわけではありません。彼の出発点は「農法(農業)」の世界、それも有機農業を志すことにありました。有機農業の現実や構造的な課題に直面し、それを解消して「新たな農法」を模索すべく全国各地を視察した経験を持っています。
 そのため、一般的な養鶏家とは一線を画す、以下のような広範かつ異例のデータを蓄積している背景があります。

  • 黒毛和牛、乳牛、黒豚、鴨、養殖魚など、鶏以外の多様な畜水産における膨大な飼料データ
  • 農業、畜産業、水産養殖業における「土壌」に関する膨大なデータ

 こうしたバックグラウンドの蓄積を経て、「日本のブレス鶏」を目指した高坂鶏の養鶏が始まります。

高坂鶏独自の養鶏アプローチ

 農法の世界に身を置いていた高坂氏は、農業と養鶏のデータを統合・昇華し、鶏の「腸」と「血液」に着目した革新的な飼料設計・飼育環境を創り出しました。これは、まさに学際的な知見を持つ人物だからこそ結実したアプローチと言えます。

 このアプローチが革新的なのは、鶏の「品種」から鶏の「腸・血液」という、より本質的・根幹的な領域へと目を向けた、構造的なパラダイムシフトにあります。
 交配を繰り返して新しい品種を開発する既存のアプローチではなく、鶏という生き物自体のポテンシャルを極限まで引き出すアプローチです。
 つまり、この手法の本質は、応用次第で鶏のあらゆる品種の質を底上げし得る普遍性を秘めている点にあります。

高坂鶏はなぜ無菌と呼ばれているのか

 前述のとおり、一般的に鶏は菌の保有(有菌)を前提としていますが、独自の飼料開発と徹底した飼育方法(以下、高坂農法)により、高坂鶏は「世界唯一の無菌鶏」と称されています。その主な理由は以下の2点に集約されます。

  • 特別な飼料設計により、食中毒菌の増殖を抑える腸内環境を作ること
  • 腸自体の強度を高めた上で、鶏の尻側から吸引して腸を引き抜く高度な解体技術により、腸管を傷つけず肉への菌の付着を徹底的に防ぐこと

 これらを踏まえた上で、客観的な事実に基づいた考察を加えるならば、「完全な無菌」ではなく「かぎりなく無菌に近い」というのが実態として正確な表現であるように思われます。

 実際に公式HP等の記述を見ても、「特別な飼料を与え、食中毒菌を抑える努力をしている」と言った表現に留まっており、腸内のカンピロバクターを100%完全に排除することはやはり生物学的に困難であることが示唆されます。
 一方で、腸管を損傷させずに引き抜く処理技術が確立されているのであれば、正肉(鶏肉類)における汚染リスクは極めて低いレベルに抑えられていると言えます。
 ただし、内臓類(レバーやハツなど)に関しては、構造上、一般的な鶏と同様に完全にリスクを排除しきれるかは慎重に見極める必要があります。また、解体時における物理的な事故(万一の腸管損傷)の可能性を完全にゼロにすることは理論上困難であるとも言えます。
 他方で、外的要因であるサルモネラ属菌に関しては、徹底した鶏舎・飼料の管理によって極限まで汚染リスクが排除されていると考えられます。
 いずれにせよ、生食・レア調理を前提として開発される鶏は過去にありません。高坂鶏もそれを目的としたわけではなく、本質を追求した結果として生食可能なレベルの品質が生まれました。
 その背景を踏まえると、ここまでの管理が徹底された鶏はおそらく存在しないと言って差し支えないでしょう。一般的な鶏に比べれば、そのリスクは圧倒的に低い水準にあります。
 高坂鶏の取扱いがスタートしてから決して短いとは言えない期間ですが、少なくとも、私の調べた限りにおいて食中毒の公式な報告等は確認されていません。

 公式に公表されている情報のみでは断定できない部分も多々ありますが、科学的な農法をベースにした高坂農法には、並々ならぬ熱意と技術が注がれていることは間違いないと思います。ご興味のある方は、ぜひ公式HPをご自身で確かめてみてください。

高坂鶏の「品種」と「カテゴリ」

品種について

 「高坂鶏」という名称は、特定の単一の鶏の品種を指すものではありません。
 「高坂鶏」というブランド力が先行してしまい、しばしば「高坂鶏」が一括りに語られがちですが、「高坂鶏」は厳密には複数の鶏の品種を高坂農法によって養鶏された鶏全体の総称です。
 取り扱う店舗によって、高坂鶏の設計は異なります。鶏の品種も違えば、飼育日数等、コストの掛け方も多様です。
 鶏の具体的な品種までは公表されていませんが、公式HPによると、店舗における提供価格帯やコンセプトなどに応じて品種を選抜し、養鶏を行っていることが伺えます。

カテゴリについて

 高坂鶏として扱われるベースの品種やランクが存在します。
 公式HPには、「3種類の高坂鶏を生産」「今後も最高品質のものを目指し研究開発を進め、3種類以上に増えることを想定」「年数をかけて過去の養鶏技術をフィードバックしながら、コストダウン可能な手法も取り入れる予定」等の記述があります。
 現在、高坂鶏農園がどれだけ詳細に高坂鶏のカテゴリを細分化しているかは不明ですが、過去から現在に至るまでに高坂鶏のランクを表す固有名詞は以下の4つを確認しています。

  • 特選高坂鶏
  • 高坂鶏プレミアム
  • 高坂和鶏
  • 高坂鶏

 私が調べたかぎり、現在の取扱い店舗における表記は、「特選高坂鶏使用」「高坂鶏使用」の2つに集約されていますが、前述の通り、世の中に存在している高坂鶏がこの2種類に限定されるわけではありません。

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